あったかサポートの「出前授業」をお薦めします

立命館大学産業社会学部
櫻井純理 様

アルバイトってこんなもの?

  「日雇いのアルバイトで作業に必要な手袋を買わされ、その分がバイト代から差し引かれていました。そんな話聞いてなかったのに、納得いきません」「バイト先の店で、今日は暇だからもう上がってくれる?って言われて早く帰らされました。これって仕方ないんでしょうか?」「事情があってバイトを辞めさせてほしいと言ったら、約束と違うと言って店長に怒鳴られました。まだもらっていない残りの給料、振込みは無理だから店に取りに来いと言われています。でも、怖くて取りに行けません。どうしたらいいでしょうか」
  私は毎年、大学の授業で「アルバイトに関する疑問点」を学生さんに書いてもらっており、上で紹介したのは、そのほんの一部です。また、授業が終わってから個別に相談に来られたり、泣きながら切羽詰まった声で電話をかけてこられたり、ということもありました。多くの若者にとって、アルバイトは日常の一部であり、生活の必要上欠かせない場合も多いわけですが、彼女/彼らが働く職場ではこうした理不尽な働かされ方が当たり前のように広がっています。

おかしいとは思うのだけれど…

  アルバイト職場についてのこのような体験を耳にし、相談を受けるにつけ、いくつかのことに気づかされました。それは…

  1. 一般的な大学生の少なくとも3分の1程度は、労働法の基本的な事項についても知識がない。たとえば、深夜労働には規定の割増賃金が支払われないといけないことや、非正規労働者でも有給休暇が取得できることなど…についての知識を持っていない学生が珍しくありません。何も教えられた経験がないまま、「労働者」として働き始めているという現実があります。
  2. 一定の知識を持っている大学生であっても、現実のバイト先で自分が問題に遭遇したときに、どうしたらよいのかがわからない。ほとんどの学生は、嫌な目にあったバイト先に見切りをつけて早々に辞めてしまうか、あるいは「次のバイト先見つけるのも大変だし…」と諦め、文句も言わずに働き続けています。改善を働きかけたことがあるという人は少数派です。
  3. 相談された教員(私)自身も、複雑な内容になると自信を持って的確なアドバイスを返すことができない。自分のこれまでの知識では正確に説明できないことがあり、また、具体的にどう行動したらよいのかまでアドバイスすることができない…そういうケースが少なからずありました。

声をあげる、につながるエンパワーメント

  そんな時に出会ったのが、あったかサポートの「出前授業」です。専門的な知識を持った社労士さんが労働法や社会保険などについてわかりやすく説明し、教えてくれる。そして、考えさせてくれる。なんとなくおかしい、間違っているとは思っていても、素手では争えないし闘えない。ましてや「闘える」なんて思ってもいない若者にとって、なるべく早い時期にこのような授業を受けてもらうことは、とても必要だし有効です。ひどいアルバイト労働を「受容」してしまった若者は、そのままひどい正社員労働をも甘受し、それは日本における「ふつうの働き方」の異常さを支えてしまうことにもつながっていると思うのです。一人でも多く、声をあげられる働き手を増やしていくこと。そのためにも、出前授業が広がり深まっていくことを期待しています。そしてもう一点。あったかサポートの出前授業でエンパワーされたのは学生だけではなく、教員である私自身でもあります。恥ずかしながら、あやふやだった労働関係法についての知識も少しずつ増えていき、「詳しい人に相談してみるね」と言わなくても済むことが増えました。日常的に「働く若者たち」と接しているだけに、これからもあったかサポートのみなさんに鍛え続けていただけたら…と考えています。